昨日に引き続きディアパソンの調整をやっていきます。
本体のクリーニングや磨き上げは完了しているので今日はアクションを中心に仕上げていきます。

アクション(=ピアノの内部で動作して、音を生み出すための力を伝える部品の集まり)にちらほら埃がついています。
蓋がしているピアノでも何年か使っていると内部に埃が入り込むことがあります。
ディアパソン(カワイ系列)ではプラスチックの部品を使用しているので、静電気の影響でなおさら埃がつきやすかったり。
しっかり取っていきます!


埃の白っぽさがなくなりました。ふつくしい。

たんに埃や汚れがついているだけで部品類にほとんど摩耗がないのはグッド。
交換の必要もなくブラシやエアダスターで簡単にキレイになっていきます。
お次はダンパーロッドを磨きます。


この縞々が錆びのもと。消すべし!

アクションの裏側に走っている部品で、ペダルの動きをアクションに伝える役目を持ちます。
これが結構汚れる部品でございます。
というのもダンパーペダル(アップライトピアノの右側のペダル)はペダルの中でも使用頻度が高く、使うたびに部品が擦れるため汚れが出てきやすい場所なのです。
長年使っているピアノだとこのダンパーロッドに錆が浮きまくって余計な摩擦をマシマシにすることもしばしば。
そうなるとダンパーの感触は悪くなるわ、タッチが重くなるわ、雑音が出るわと悪いことばかり。
今回のディアパソンはかなり綺麗な部類に入りますが、それでもしっかり磨きます。


光輝くダンパーロッド! こうじゃなきゃね。

アクションの清掃が一通り終わったところでお次はペダルに入ります。
ペダルの部材は「真鍮」
黄金色に輝くため金の代用品としても重宝されます。
しかしながらこの真鍮、めちゃめちゃ光る代わりにめちゃめちゃ錆びやすい……!
放っておくとすぐに黒ずみ、長期間放置していると錆まみれになってしまいます。
幸い今回は軽症の部類なので研磨剤のみで充分磨き上げられました。


見よ! この黄金の輝きを!


あんまり綺麗だから引きでも撮っちゃう

さて、これでクリーニングについてはほとんどが完了しました。
ちなみに金属類などのクリーニングで使っているのは以下のような薬剤。


三種の神器ならぬ四種の神器。頼りになります。

KUREの強力サビ取り剤は主にペダルの頑固な錆取り用。
リン酸系なので使った後は水でしっかり拭いとります。
お次はド定番のピカール。
石油系溶剤と研磨剤が入ったドロリとしたコンパウンドです。
仏具などの磨き上げにもよく使われますね。
FMCのコンパウンドはピカールよりも細かい仕上げ用のコンパウンドでペースト状で使いやすいのが嬉しい代物。
めちゃめちゃ綺麗に仕上がります。
ZIPPOはコンパウンド残りを除去するための脱脂材として使用します。
石油系溶剤はその名の通り石油=油が混ざっているため拭っただけではふき取り切れず、新たな錆の原因にもなります。
可能なかぎり取っ払いたいのですがなにせ相手は油。
そうそう簡単には取り除けません。
そこで使うのがZIPPIOなどの”油”
油は油に溶けやすい性質を持っているため、揮発しやすい油で拭ってやることでふき取ることが可能です。
ベンジンなんか使ってもいいですね!
さらに徹底して消し去るためにシンナー(塗料の薄め液)やアセトン(除光液の主成分)なんかも有効です。

道具を紹介したところで、お次の作業は内部の調整。
アクションの調整のことを『整調』と呼びます。(調律師用語)
数百にもおよぶ部品が適切な運動をするために、部品同士の距離や高さを調整していく作業です。


右から三番目がほんのちょっと曲がってる。ほんのちょっとじゃん……


あらやだ真っすぐ。

と、こんな具合に調整をしていきます。
左右も前後も上下も合わせていかないとならないのでなかなか手間のかかる作業です。


ペンチやヤットコのご親戚かなにかでいらっしゃる?

こんなへんちょこりんな道具を――

こんな具合に使います。(※撮影用。厳密な作業はこんな感じじゃありませんのであしからず)
その他の部品もいろいろな道具を使って調整するのですが、今回は撮影がままならずワイヤーの調整のみになってしまいました。あちゃあ。
そんなこんなで整調作業は7割くらいが完了しました!
残りは次回!
さぁ終わりが見えてきました。
頑張っていきましょう!